
そういえば熱中症対策の義務化、ニュースで言ってたような…

2025年6月から、建設業界では熱中症対策が本格的に「義務化」されました。
毎年、夏になるとニュースで目にする建設現場の熱中症事故。
実際に、建設業は全産業の中でも熱中症による労災が特に多く、毎年全国で熱中症による労災が報告されています。
今回の法改正では、単なる注意喚起ではなく、現場ごとの具体的な対策と書類の整備が求められるようになります。
本記事では、今回の法改正で「そもそも何が変わるの?」「何から始めればいいの?」といった疑問に、初心者にもわかりやすく解説していきます。
義務化の背景とは?熱中症による死亡事故と労災の増加
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出典:2024 年(令和6年) 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(確定値)
建設業は炎天下での屋外作業が多く、体力的にも過酷な現場がほとんどです。
特に真夏は、アスファルトや鉄骨などの照り返しによって体感温度が40℃を超えることもあり、命に関わる熱中症リスクが高まります。
令和6年における職場での熱中症※1による死傷者(死亡・休業4日以上)は、1,257人(前年比151人・約14%増)であり、全体の約4割が建設業と製造業で発生しています。
また、熱中症による死亡者数は31人(前年と同数)であり、建設業(10人)や製造業(5人)で多く発生しています。死亡災害の多くの事例では、重篤化した状態で発見されるケース、医療機関に搬送しないケースなど、初期対応の放置、対応の遅れが見られました。
こうした背景から、現場ごとのリスク評価と予防策を義務化することで、事故を未然に防ぐ狙いがあります。
具体的に何をすればいい?建設現場で求められる熱中症対策
作業前のWBGT測定と掲示の義務
WBGT(暑さ指数)とは、気温・湿度・輻射熱などを総合して算出される「熱中症リスクの目安」となる数値です。義務化により、作業前にWBGTを測定し、見やすい場所に掲示することが求められます。WBGTが28℃を超えると、作業の中断や頻繁な休憩が必要になるなど、現場での判断基準になります。
水分・塩分補給のルール化
各現場には、水や経口補水液、塩分タブレットなどを常備し、作業員がこまめに補給できるように整備する必要があります。個人任せではなく、全体で「飲みやすい」「補給しやすい」体制を作ることがポイントです。
定期的な休憩スペースの確保
ミストファン、冷房付き休憩所、空調服などの導入が推奨されています。作業の合間にしっかりと体を冷やすことで、熱中症を防ぐ効果が大きくなります。
書類上の対応も必要!元請・下請け間での準備と共有事項
熱中症予防対策計画書の作成と提出
元請企業は「熱中症予防対策計画書」を作成し、下請け各社と共有する必要があります。作業手順に応じたWBGT対応策や、休憩頻度などが記載され、現場ごとに作成・保存が義務づけられています。
教育・訓練記録の整備
新しい作業員が現場に入る際には、熱中症対策に関する教育を実施し、その記録を保存します。「知っているはず」ではなく、明確に記録として残すことで、労働基準監督署からの指導にも対応できます。
掲示物による周知
現場の出入口や休憩所に、「熱中症予防ポスター」「WBGTの数値」などを掲示することも義務です。全員が意識を共有できる環境をつくることが重要です。
知らないと危険!義務化に対応しないリスクとは?
義務化に対応しないまま作業を続けた場合、万が一熱中症事故が起きた際に「使用者責任」を問われる可能性があります。労働災害として認定されれば、行政指導や罰金、最悪の場合は元請企業との契約解除にもつながりかねません。
また、現場での対応力不足が明るみに出ると、他の元請や発注者からの信頼も失うリスクがあります。熱中症対策は「コスト」ではなく「リスク回避と信頼獲得の投資」と捉えることが大切です。
中小企業・初心者でもできる!熱中症対策のコツと便利ツール
無料テンプレートや配布資料を活用
厚生労働省や建設業労働災害防止協会(建災防)のサイトでは、熱中症対策計画書やWBGT記録表のテンプレートが無料でダウンロードできます。初心者でも記入しやすいように設計されており、まずはこの資料を活用するのがオススメです。
Excel管理表・チェックリストでの対策記録
WBGT測定の数値や作業員の体調チェック、水分補給のタイミングなどをExcelで一覧化しておくと、記録も管理もしやすくなります。日報やKY(危険予知)活動表と連動させると、無理なく定着できます。
最低限の備えとしての意識づけ
すべて完璧に揃えようとするとハードルが上がりますが、「まずはWBGT測定と水分補給ルールから」など、できることから始める意識が大切です。書類の形式よりも、現場の命を守る意識が最優先です。
まとめ|熱中症対策は命を守る仕事の一部。今すぐできることから始めよう
熱中症対策の義務化は、ただの「面倒なルール」ではなく、現場で働く人の命を守るための仕組みです。2025年6月からの義務化をきっかけに、今こそ安全への取り組みを見直す絶好のタイミングです。
初心者や中小企業でも、テンプレートやチェックリストを活用すれば、十分に対応可能です。「信頼される現場」をつくる第一歩として、熱中症対策に前向きに取り組んでいきましょう。
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